ここ数年、美容医療の分野で「ポテンツァ」という名前を耳にする機会が格段に増えました。InstagramやTikTokでは、毛穴からニキビ跡、さらには肝斑やたるみまで「これ一つで解決できる」といった紹介も少なくありません。実際に患者様から「ポテンツァをすれば良くなりますか?」と質問を受けることもあります。医師としての立場から言えば、そこには少し冷静な視点が必要だと感じています。
ポテンツァは、微細な針で皮膚に小さな穴をあけながら高周波を流し、真皮層に直接熱を届ける仕組みです。これにより線維芽細胞が刺激され、コラーゲンやエラスチンが新たに作られていきます。創傷治癒の力を活用するため、時間をかけて肌質改善につながることが期待できます。加えて、薬剤を併用できるモードも備えており、トラネキサム酸や成長因子などを導入するケースもあります。ただし、これはあくまで補助的な役割であって、すべての悩みに劇的な変化をもたらすわけではありません。
SNSでは「肝斑に効いた」との体験談も見られますが、肝斑は熱や摩擦で悪化することもある繊細な病態です。特別な設定で穏やかに照射する方法はありますが、それでも適応を慎重に見極める必要があります。私の経験でも、刺激を避けた方が良い方が少なくありませんでした。むしろ内服や外用を中心に整え、場合によっては別の治療を優先する方が長い目で見て安全なこともあります。
ニキビ跡に関しては、浅い凹凸には比較的反応が見られます。しかし、深いアイスピック型の瘢痕では単独治療の限界があり、サブシジョンやTCAクロスと組み合わせなければ思うような改善は得られません。毛穴の開きや肌のハリ不足に対しては手応えを感じやすい一方で、重度のたるみや皮膚の余剰が目立つ場合にはHIFUなどを検討すべきだと考えています。
よく気にされるのは、ダウンタイムです。SNSでは「赤みはすぐ消えた」といった声もありますが、実際には数日から1週間ほど赤みやざらつきが続くことがあります。炎症後色素沈着を生じる方も一定数おられ、肌質によってリスクが異なります。こうした点は、SNSの短い動画や写真だけでは伝わらない部分です。
美容医療の現場にいると感じるのは、「施術をする」こと以上に「しない勇気」を持つことの重要性です。流行に流されて無理に受ける必要はありません。ご自身の肌の状態や生活習慣を踏まえ、適していないタイミングならば見送ることも立派な選択肢です。特に、ダウンタイムを取れない時期や肌のバリアが不安定な状態では、後悔につながりやすいと実感しています。
ポテンツァは確かに可能性のある治療機器ですが、万能薬ではありません。SNSの華やかな体験談だけに頼らず、医学的な背景と自分の肌の現実を照らし合わせて検討することが大切だと思います。適切な症例に行えば有益な選択肢となりますが、それ以外の方には別の治療法のほうが理にかなう場合も多いのです。医師としては、患者様が「やるかどうか」ではなく「今の自分に本当に必要かどうか」を一度立ち止まって考えられるよう、お手伝いできればと思っています。


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